レッグペルテス病 Legg-Calve-Perthes病(LCPD)

科目:

  • 特徴

    当院の陰山はレッグペルテス病の早期診断とCT画像の有用性(2003年)、CT像と病理組織像との関連性 (2005年)、LCPDの100頭 (2011年)、LCPDの200頭の疫学と治療(2016年)、LCPDの大腿部筋肉量(2021年)と詳細な検討を行っており、犬のレッグペルテス病について世界でも最も多くの症例の治療実績があり、学会報告しています。

    「特徴」
    T.プードル、ヨーキー、M.ピンシャー、チワワ、パグ、テリア系の小型および超小型犬種に発生する。5㎏以下の体重が92%を占める。雌雄差はないと考えられているが、ヨーキーの場合にはやや雄に多い傾向がある。片側性が多いが、両側性の発生率は12〜16.5% と報告されている。発症時期は生後3〜13ヵ月齢で、最も発症が多いのは生後4〜11ヵ月齢である。また、LCPD症例の26%に膝蓋骨脱臼が合併している。

  • 原因

    大腿骨頭および骨頚の非炎症性無菌性壊死で、小型犬の成長期に大腿骨頭の血行不良により大腿骨骨端部の壊死が生じることが原因と考えられている。犬種特異性が認められることから、遺伝性疾患の可能性が示唆されている。

  • 症状

    明らかな外傷がないのにもかかわらず、徐々に後肢を跛行し、初期にはスキップ様歩行し、最終的には完全に後肢を挙上し3本脚で歩行することが多い。ただし、骨頭壊死部の骨折が起こった場合には急激に患肢を挙げた跛行となる。

  • 診断

    触診で股関節の伸展および外転で痛みが見られ、臀筋および大腿二頭筋の萎縮が見られる。股関節のレントゲン検査が必要である。レントゲン所見として初期変化では関節液浸出と関節軟骨の持続成長により関節間隙の幅が増加し、大腿骨近位骨端の骨壊死による不整化領域が認められる。また、骨頭の陰影には虫食い様の斑点が認められる。末期変化として大腿骨頚の硬化症および骨頚部が肥大し、大腿骨頭は平坦化し不規則となる。さらに、重度になると二次性変性性関節疾患を伴う大腿骨頭の形状の完全な破壊および寛骨臼の骨棘形成、寛骨臼が浅くなる。

    股関節のCT検査で大腿骨頭の骨壊死部が明瞭に診断可能である。特に患肢と反対側の骨頭を詳細に診断するためにも有用である。CT検査により前期から中期では軟骨下骨の壊死が骨頭内嚢胞様透過陰影として明瞭に観察され、中期では壊死部の圧壊が正確に診断可能である、後期になると骨のリモデリングにより嚢胞様陰影は消失し、二次性の股関節の変形が主体となることが分かっている。
    したがって、現在では、CT検査により確定診断した後に手術を行うことが多い

  • 治療

    レッグペルテス病に罹患した多くの犬は、非常に強い痛みを伴うため、急速に患肢の筋肉量が低下する。 軽度の場合には内科治療で痛みを緩和し比較的良好に経過する場合があるが、将来的に股関節の関節炎に進行し、慢性疼痛を伴うことが多い。したがって、レッグペルテス病の症例の多くはCTによる早期診断と手術が推奨される。手術方法は大腿骨頭切除手術を行なう。

  • 経過

    手術での予後は良いが、早期診断を行うことで患肢の筋萎縮が重度になる前に手術を行なった方が予後良好である。 また、手術後には早期リハビリテーションを積極的に行うことでさらに良好な結果が得られる。

    下記に
    名古屋動物医療センターにおいて犬のレッグペルテス病(LCPD)と確定診断された犬200頭、224股関節での検討
    (2016年12月3日 第93回日本獣医麻酔外科学会にて発表) を記載します。

犬のレッグペルテス病(LCPD)の犬200頭、224股関節での検討※画像はクリックorタップで拡大します

  • レッグペルテス病の好発犬種 2016年@名古屋動物医療センター

  • レッグペルテス病の来院時月齢 2016年@名古屋動物医療センター

  • レッグペルテス病の体重 2016年@名古屋動物医療センター

  • レッグペルテス病のレントゲン 2016年@名古屋動物医療センター

  • レッグペルテス病のレントゲンとCT 2016年@名古屋動物医療センター

  • レッグペルテス病のレントゲンとCT 2016年@名古屋動物医療センター

  • レッグペルテス病と膝蓋骨脱臼のCT計測による大腿部筋萎縮率 (2021年1月24日日本獣医麻酔外科学会オンライン学術集会にて発表)LCPD:レッグペルテス病、MPL:膝蓋骨内方脱臼、LPL:膝蓋骨外方脱臼

  • 手術(切除関節形成手術)

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