骨折

科目:

  • 特徴

    骨折とは骨が折れたり亀裂が入ること。しかしながら、骨折は骨だけの問題ではなく、骨折周囲の皮膚、神経、血管、筋肉、臓器などの損傷を伴っていることが多い。それらの周囲組織に重度に損傷を受けている場合には、骨折の治療は複雑で困難となる。特に交通事故や高所からの転落などによる「高エネルギー損傷」の場合には頭部や肺や内臓などに損傷を伴うことがある場合や骨が皮膚から出ている「開放骨折の場合」には、救急処置が必要となる。

  • 原因

    骨折の原因は主に、外傷による骨折と病的骨折に分類される。外傷による骨折は、主に交通事故や高所からの転落などによる強い外力で骨折を起こす場合と、落下や転倒などの比較的小さな外力が原因の場合がある。「病的骨折」とは腫瘍や骨粗鬆などの基礎疾患のために骨自体の強度が低下している部位に骨折を起こした場合を指す。また、骨折は、「開放骨折」(骨折部位が皮膚を突き破って外に露出した骨折)と「非開放骨折」に分類される。 成長期の犬の場合には「成長板骨折」という成長板(骨の端の方の骨が成長する部位)が骨折している場合があり、成長に従って骨が変形する場合もある。近年ではチワワやトイプードルやポメラニアンなどの小型犬を抱いていて、フローリングやコンクリートの床に落下することが原因で、橈尺骨骨折や関節周囲の骨折をする場合が非常に多い。

  • 症状

    骨折が起こった場合には「痛み」や「跛行」を示し、患部の圧痛や腫れが認められる。 多くの場合、非常に強い痛みを伴うことが多い。また、交通事故などの強い外力で骨折が起こっている場合には、肺、肝臓や膀胱などの臓器も同時に損傷している可能性があり、骨盤や脊椎や頭蓋骨などの骨折の場合には麻痺や意識消失などの神経症状を伴うこともある。

  • 診断

    骨折が起こっている場合には非常に強い痛みを伴っていることが多く、犬も動転しているために飼い主が咬まれる可能性があるため、充分に注意する必要がある。骨折を起こした動物は骨折の原因にもよるが、生命にかかわるショック症状や出血を起こしていることがあるため、救急治療を必要とする場合がある。その後、全身状態が安定してから骨折の治療を開始する。四肢の骨折の場合には開放骨折の可能性があるため、直ちに患部周辺の毛をバリカンで刈り、皮膚からの出血の有無や創傷がないかを確認し、開放性骨折であれば早急に抗生物質の投与や洗浄などの処置を行う必要がある。診断は触診と共にレントゲン検査を行う。また、同時に他の部位の損傷がないかを十分に確認する。骨盤骨折や関節周囲の骨折の場合などのレントゲン検査だけでは診断が不正確な骨折の場合には超音波検査やCT検査やMRI検査を行う。

  • 治療

    骨折の治療方針は犬の年齢、体重、骨折部位、骨折の程度、周囲の靱帯や腱、筋肉、神経の損傷の有無や程度により決定する。骨折の治療法には、ギプスなどの外固定、ピン(写真)、ワイヤー、プレート(写真)、スクリュー、創外固定法(写真)などの固定法がある。骨折治療では安静が必須であるが、犬の場合には完全な安静は困難であるため、一般的にはギプス固定のみでは合併症が起こる可能性が高いため、手術が必要になることが多い。開放骨折の疑いがある場合には毛をバリカンで刈って皮膚に穴が開いていないか判断する。開放骨折の場合には、直ちに抗生物質の投与と共に、傷口を洗浄・消毒する。重症の開放骨折では皮膚、筋肉、腱、靭帯、骨、血管の損傷を伴う事が多いため、治療が困難で治癒に時間がかかる。手術後には適切な運動制限と同時に、周囲関節の可動域訓練や筋力強化運動などのリハビリテーションが必要となる。

  • 経過

    適切な手術を行った場合には2から3か月以内に骨癒合する。合併症には感染、「癒合不全」(骨が癒合しない)、「変形癒合」(曲がって癒合)、周囲の関節の動きが悪くなるなどの骨折病などがある。それらの合併症は「小型犬の橈尺骨骨折」や「成長板骨折」で多いため、経験豊富な専門の獣医師の手術が望まれる。

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  • レントゲン写真

    手術前のレントゲン写真

  • 骨折レントゲン

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    手術前のレントゲン写真

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    手術後のレントゲン写真

  • 骨折レントゲン

    橈尺骨骨折(プレート、スクリュー固定)橈尺骨重度開放骨折(創外固定)

  • 骨折レントゲン

    手術後のレントゲン写真

  • 骨折レントゲン

    大腿骨遠位端骨折(プレート、スクリュー固定)大腿骨遠位開放骨折(創外固定)

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