犬の跛行の主な原因
陰山 敏昭 名古屋動物医療センター 整形外科・脳神経外科
前肢跛行の主な原因
後肢跛行の主な原因
前肢跛行の主な原因
大型犬・未成熟犬の前肢の跛行
治療方針 | 発症 | 跛行の推移 | 雌雄差 | コメント | |
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全身的原因/多発性 | |||||
外傷−骨折、脱臼 | CBC | 急激 | D | ||
汎骨炎 | M | 急激 | D/E | 雄 | 6-18ヵ月齢。G.シェパードに多い。2-3週間で良化するも他の肢の跛行が再発。前肢では橈骨中央、尺骨近位、上腕骨遠位部に多い。患部の圧痛。一般的に前肢>後肢。 |
肥大性骨異栄養症 | M | 急激 | D/E | 2-8ヵ月齢。複数の肢が侵される。特に手根関節部の腫れ、圧痛。痛み強い。食欲不振、発熱の可能性。時に成長板障害。 | |
頚椎病変−脊椎不安定 | MS | 急/緩 | B | グレートデン。5ヵ月齢-2歳齢。頚椎不安定による黄色靱帯の肥厚。 | |
栄養性二次性上皮小体機能亢進症 | CBC | 緩徐 | B | 肉のみの食餌(低カルシウム、高リン)が原因。非常に軽度な外傷で骨折。病的骨折が起こった場合には急激に発症。 | |
細菌性関節炎 | CBC | 急激 | B | 通常血行性。しばしば複数の関節、他の臓器が侵される。 | |
骨嚢胞 | S | 緩徐 | B/E | 雄 | ドーベルマン、G.シェパード。病的骨折の場合には急激に発症。遠位橈骨と尺骨が多い。 |
肩関節周辺 | |||||
上腕骨頭の離断性骨軟骨炎 (OCD) | S | 急/緩 | A/B | 雄 | 4-8ヵ月齢。グレートデン、ピレニアン、レトリバー。27-68%は両側性。多くは伸展ストレスで痛み。 |
肘関節周辺 | |||||
肘突起不癒合 (UAP) | S | 緩徐 | A/B | 雄 | 5-9ヵ月齢。G.シェパードに多い、バセットハウンド、E.ブルドック。運動後の間欠的跛行。35-40%で両側性。肘関節の適合不良に関連。 |
尺骨の鈎状突起の分離(FCP) | MS | 緩徐 | A/B | やや雄 | 6-11ヵ月齢(5-7ヵ月齢)。レトリバー、バーニーズ、ロットワイラーに多い。約50%で両側性。 |
上腕骨内側顆の離断性骨軟骨炎 (OCD) | MS | 緩徐 | C | 5-9ヵ月齢。レトリバー、バーニーズ、ロットワイラーで多発。特に運動後、休憩後に跛行が明白。30-50%両側性。 | |
内側上顆不癒合 (UME、内側上顆の屈筋石灰化) | MS | 緩徐 | C | やや雄 | 4-5ヵ月齢あるいは5歳齢前後。ラブラドル、G.シェパード、E.セッター。 |
成長板早期閉鎖による亜脱臼 | S | 緩徐 | B | 橈尺骨の成長板障害で起こる。臨床的には大型犬で特に重要。二次性の肘関節適合不良の原因。 | |
手根関節周辺 | |||||
成長板早期閉鎖による亜脱臼/外反、内反変形 | S | 緩徐 | B | 橈尺骨の成長板障害で起こる。二次性の手根関節適合不良の原因。 | |
尺骨の軟骨芯遺残 | S | 緩徐 | D | 肢の外反変形が緩徐に進行する。尺骨遠位で良く認められる。 | |
手根虚弱/不安定 | M | 急激 | D/E | 生後8-16週の離乳期に起こる。手根の過屈曲。G.シェパード、ドーベルマン、グレートデン、シャーペイ |
- 治療方針:M=保存的治療、S=観血的治療、MS=保存的治療後経過により観血的治療、CBC=症例により様々
- 経過:A=良くなったり悪くなったり;B=進行性;C=間欠性;D=様々;E=自然に良化
大型犬・成犬の前肢の跛行
治療方針 | 発症 | 跛行の推移 | 雌雄差 | コメント | |
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全身的原因/多発性 | |||||
外傷−骨折、脱臼、神経-筋損傷 | CBC | 急激 | D | ||
汎骨炎 | M | 急激 | D/E | 雄 | G.シェパードでは2歳前後まで罹患することあり。一般的に前肢>後肢 |
頚椎病変 椎間板疾患 |
MS | 緩徐 | B | 比較的高齢の8〜10歳齢に多く発生。徐々に進行。重度障害でないことが多い。(Hansen Type II)。 | |
腫瘍 | S | 緩徐 | B | 中年〜高齢。徐々に進行。痛み少ない。 | |
尾側頚椎不安定 | MS | 緩/急 | B | ドーベルマン(5〜6歳時)、グレートデン(1〜2歳以内)。 | |
腕神経叢の腫瘍 | S | 緩徐 | B | 平均7.4歳。片側性の前肢挙上/麻痺。著明な前肢筋(特に棘筋群)の筋萎縮。腋窩の腫瘤に著明な圧痛。 | |
骨、軟骨、滑膜の腫瘍 | S | 急激 | B | 原発性骨、軟骨、滑膜の腫瘍が最も一般的。前肢の骨肉腫は橈骨遠位、上腕骨近位に多く、平均年齢7歳。圧痛・腫脹を伴う。 | |
細菌性関節炎 | CBC | 急激 | B | 通常、単関節。もともと存在した関節炎に起こりやすい。 | |
肩関節周辺 | |||||
上腕骨頭の離断性骨軟骨炎(OCD) | MS | 緩徐 | D | 雄 | 2-3歳。多くは肩関節の関節炎とともに肩関節内の関節鼠を伴う。 |
変性関節疾患 (DJD) | M | 緩徐 | C | 肩関節不安定あるいは上腕骨頭の離断性骨軟骨炎に伴うことが多い。 | |
棘下筋拘縮 | S | 急激 | B | 猟犬、使役犬。多くは急性外傷後3-4週後から特徴的な跛行。痛みはない。肩関節の回内が不可能。 | |
上腕二頭筋腱の腱鞘炎 | MS | 緩徐 | A/C | ラブラドル。中年から老犬。運動後の跛行。肩関節屈曲+肘関節伸展位で結節間溝の上腕二頭筋腱の圧痛。 | |
棘上筋の石灰化 | MS | 緩徐 | C | しばしば両側性。上腕二頭筋腱の腱鞘炎との鑑別必要。石灰化=跛行ではない。 | |
肘関節周辺 | |||||
変性関節疾患 (DJD) | M | 緩徐 | A/C | 多くは肘関節異形成に続発。肘関節伸展制限あり。 | |
肘突起不癒合(UAP) | MS | 緩徐 | A/B | 雄 | 関節の不安定による関節炎。35-40%で両側性。G.シェパードに多い、バセットハウンド、E.ブルドック。 |
尺骨の鈎状突起の分離 (FCP) | MS | 緩徐 | A/B | やや雄 | 約50%で両側性。レトリバー、バーニーズ、ロットワイラーに多い。 |
上腕骨内側顆の離断性骨軟骨炎(OCD) | MS | 緩徐 | C | やや雄 | 時に肘関節内に関節鼠。運動後、休憩後に特に跛行が明白。レトリバー、バーニーズ、ロットワイラーで多発。 |
成長板早期閉鎖による亜脱臼 | S | 緩徐 | A/C | 橈骨と尺骨の成長不一致。肘関節伸展ストレスで痛み。 | |
手根関節周辺 | |||||
靱帯性不安定症/過伸展 | S | 急/緩 | B | 多くは外傷性、過肥による。 | |
成長板早期閉鎖による亜脱臼 | S | 緩徐 | D | 前腕変形を伴う。 | |
変性関節疾患 (DJD) | M | 緩徐 | C | 関節の不安定、過肥による関節炎。手根関節の屈曲制限。シェルティー。 | |
炎症性関節疾患±不安定性 | MS | 緩徐 | B | 平均5.8歳。多くの場合紅斑性狼瘡(SLE)に伴って起こる。多発性関節炎、筋炎、糸球体腎炎、皮膚炎、貧血などを併発。 | |
肺性肥大性骨症 | S | 急激 | B | 肺病変(まれに膀胱・肝臓腫瘍)の有無を確認。 | |
手根中手関節 | |||||
種子骨分離 | MS | 急激 | D | ラブラドル、ロットワイラーで多い。第2、第7種子骨が多い。 |
- 治療方針:M=保存的治療、S=観血的治療、MS=保存的治療後経過により観血的治療、CBC=症例により様々
- 経過:A=良くなったり悪くなったり;B=進行性;C=間欠性;D=様々;E=自然に良化
小型犬・未成熟犬の前肢の跛行
治療方針 | 発症 | 跛行の推移 | 雌雄差 | コメント | |
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全身的原因/多発性 | |||||
外傷−骨折、脱臼 | CBC | 急激 | D | ||
環軸椎亜脱臼 | S | 急激 | D | ポメラニアン、トイプードル、ヨーキー。60%が1歳未満(8ヵ月齢が多い)であり、成犬では2〜6歳で発症。頚部痛。 | |
栄養性二次性上皮小体機能亢進症 | CBC | 緩徐 | B | 肉のみの食餌(低カルシウム、高リン)。非常に軽度な外傷で骨折。病的骨折が起こった場合には急激に発症。 | |
肩関節周辺 | |||||
先天性脱臼 | S | 緩徐 | B/D | トイ犬種。通常内方脱臼。関節窩/上腕骨頭の重度の変形。多くは両側性。多くの場合、成熟時には跛行は比較的消失することが多い。様子で手術が必要。 | |
肘関節周辺 | |||||
先天性脱臼(尺骨近位が外旋するタイプ) | S | 急/緩 | B | 出生時〜4ヵ月齢。シェルティー、ペキニーズ、パグ、コッカスパニエル、ヨーキー、ボストンテリア、M.プードル、M.ピンシェル。早期手術必要。 | |
先天性脱臼(橈骨頭が尾外側に脱臼するタイプ) | S | 急/緩 | B | 2-4ヵ月齢。ペキニーズ、ヨーキー、ポメラニアン、ブルテリア、ブルドッグ、マスチフ、ラブラドル。早期手術必要。 | |
前腕骨の成長板早期閉鎖による亜脱臼 | S | 急激 | B | 橈骨と尺骨の成長不一致。肘関節伸展ストレスで痛み。 | |
手根関節周辺 | |||||
成長板早期閉鎖による亜脱臼 | S | 急激 | B | 前腕の変形を伴う。 |
小型犬・未成熟犬の前肢の跛行
治療方針 | 発症 | 跛行の推移 | 雌雄差 | コメント | |
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全身的原因/多発性 | |||||
外傷−骨折、脱臼、神経-筋損傷 | CBC | 急激 | D | ||
頚椎病変−環軸椎亜脱臼 | CBC | 急激 | D | ポメラニアン、トイプードル、ヨーキー。60%が1歳未満(8ヵ月齢が多い)、成犬では2〜6歳で発症。痛み強い。 | |
椎間板疾患 | CBC | 急激 | D | 軟骨形成異常の犬種(Hansen Type I)。3〜6歳齡で突然発症。 | |
脊髄圧迫する腫瘍 | S | 緩徐 | B | 中年〜高齢。徐々に進行。頚部弯曲。 | |
腕神経叢の腫瘍 | S | 緩徐 | B | 平均7.4歳、片側性の前肢挙上/麻痺、著明な前肢筋(特に棘筋群)の筋萎縮、腋窩の腫瘤に著明な圧痛あり | |
多発性関節炎±不安定性(関節リウマチ) | M | 緩徐 | B | 複数の関節が腫脹。8ヵ月-8歳齢(平均4歳)で発症が多い。M.ダックス、マルチーズ、ヨーキー、ポメ。関節の重度の不安定/脱臼を来す。主に手根関節、足根関節が侵される。時に肘関節、膝関節、肩関節、股関節、脊椎の関節。 | |
肩関節周辺 | |||||
変性関節疾患 (DJD) | MS | 緩徐 | A | 肩関節の低形成、過肥、不安定が誘因。 | |
内側脱臼−非外傷性 | MS | 急/緩 | B/C | T.プードル、シェルティー、キャバリア。明らかな外傷歴がなく、内方脱臼が認められる。飼い主が犬を抱くときに痛み。 | |
肘関節周辺 | |||||
変性関節疾患 (DJD) | MS | 緩徐 | C | 肘関節の適合性不良、過肥が誘因。 | |
成長板早期閉鎖による亜脱臼 | S | 緩徐 | A/C | バセットハウンド、シーズー、ダックス。橈骨と尺骨の成長不一致。肘関節伸展ストレスで痛み。 | |
手根関節周辺 | |||||
変性関節疾患 (DJD) | MS | 緩徐 | A/D | 多くの場合、前腕変形、過肥、靱帯損傷による不安定が原因 | |
炎症性関節疾患±不安定性(関節リウマチ) | M | 緩徐 | B | 複数の関節が腫脹。8ヵ月-8歳齢(平均4歳)で発症が多い。M.ダックス、マルチーズ、ヨーキー、ポメ。関節の重度の不安定/脱臼を来す。主に手根関節、足根関節が侵される。時に肘関節、膝関節、肩関節、股関節、脊椎の関節。 | |
成長板早期閉鎖による亜脱臼 | MS | 急/緩 | B/C | シーズー、ダックス。過肥、手根関節外反変形。橈側側副靭帯損傷を伴うことあり。 | |
肺性肥大性骨症 | S | 急激 | B | 肺病変(まれに膀胱・肝臓腫瘍)の有無を確認。 |
- 治療方針:M=保存的治療、S=観血的治療、MS=保存的治療後経過により観血的治療、CBC=症例により様々
- 経過:A=良くなったり悪くなったり;B=進行性;C=間欠性;D=様々;E=自然に良化
後肢跛行の主な原因
大型犬の未成熟犬での後肢の跛行
治療方針 | 発症 | 跛行の推移 | 雌雄差 | コメント | |
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全身的原因/多発性 | |||||
外傷−骨折、脱臼 | CBC | 急激 | D | ||
汎骨炎 | M | 急激 | D/E | 雄 | 6-18ヵ月齢。G.シェパードに多い。後肢では大腿骨近位〜中央部、脛骨近位に圧痛。2-3週間で良化するも他の肢の跛行が再発。一般的に前肢>後肢。 |
肥大性骨異栄養症 | M | 急激 | D/E | グレートデン、アイリッシュセッター。複数の肢が侵される。手根部や足根部の腫れ。痛み強い。食欲不振、発熱の可能性。時に成長板障害を併発。 | |
細菌性関節炎 | CBC | 急激 | B | 通常血行性。痛み強く、挙上性の跛行。しばしば複数の関節、他の臓器が侵される。 | |
栄養性二次性上皮小体機能亢進症 | CBC | 緩徐 | B | 肉のみの食餌(低カルシウム、高リン)。非常に軽度な外傷で骨折。病的骨折が起こった場合には急激に発症。 | |
骨嚢胞 | S | 緩徐 | B/E | 雄 | ドーベルマン、G.シェパード。病的骨折の場合には急激に発症。遠位橈骨と尺骨が多い。 |
股関節周辺 | |||||
股関節異形成 | CBC | 緩徐 | A/B | 多くは4-12ヵ月齢で発症。股関節の過度の緩みの結果として股関節の関節炎93%は両側性。股関節伸展/外転で痛み。痛みの程度は様々。 | |
股関節脱臼 | CBC | 急激 | D | 股関節異形成に関連することが多い。鑑別診断として大腿骨頭成長板骨折。 | |
膝関節周辺 | |||||
大腿骨外側顆の離断性骨軟骨炎 (OCD) | S | 急激 | D | 5-7ヵ月齢。レトリバーや秋田犬などの膝関節が伸展している体型の犬に多い。跛行の程度は様々。関節液の貯留。 | |
膝蓋骨脱臼 | S | 急激 | B | 多くは外方脱臼。5-6ヵ月齢。通常両側性。ピレニアン、レトリバー、グレートデン。脱臼が持続すると骨関節の変形。股関節異形成などの他の発育異常と関連することあり。長趾伸筋腱損傷を続発する。レトリバーでは内方脱臼も頻度が高い。 | |
長趾伸筋腱起始部の裂離損傷 | S | 急激 | D | サイトハウンド、グレートデン。5-8ヵ月齢。初期の跛行後は慢性の軽度跛行となる。慢性経過で膝関節外側に硬固な腫れ。 | |
前十字靱帯付着部の裂離骨折 | S | 急激 | B | 著明な脛骨前方不安定。関節液貯留。 | |
足根関節周辺 | |||||
足根関節の過伸展 | MS | 急/緩 | D | ピレニアン、バーニーズに多い。股関節形成不全による体重の前方移動に伴うことが多い。 | |
骨端線早期閉鎖による外反/内反変形 | S | 緩徐 | B | ピレニアン、バーニーズは内反変形多い。 | |
距骨の離断性骨軟骨炎 | MS | 急/緩 | B | ラブラドル、ロットワイラー。最初の臨床症状は6〜12ヵ月齢(平均7ヵ月齢)。36%は12ヵ月齢以上、18%は24ヵ月以上で上診。75%の症例では内側滑車稜、ロットワイラーは外側滑車稜に病変が多い。両側性のOCDは44%。 |
- 治療方針:M=保存的治療、S=観血的治療、MS=保存的治療後経過により観血的治療、CBC=症例により様々
- 経過:A=良くなったり悪くなったり;B=進行性;C=間欠性;D=様々;E=自然に良化
大型犬の成犬での後肢の跛行
治療方針 | 発症 | 跛行の推移 | 雌雄差 | コメント | |
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全身的原因/多発性 | |||||
外傷−骨折、脱臼、神経-筋損傷 | CBC | 急激 | D | ||
脊髄病変 椎間板疾患 |
MS | 緩徐 | B | 比較的高齢の8-10歳齢に多く発生。徐々に進行。重度障害でないことが多い。(Hansen Type II)。 | |
腫瘍 | S | 緩徐 | B | 中年〜高齢。徐々に進行。痛み少ない。 | |
尾側頚椎不安定 | MS | 緩/急 | B | ドーベルマン(5-6歳時)、グレートデン(1-2歳以内)。 | |
変性性脊髄症 | M | 緩徐 | B | G.シェパード。5-7歳。痛みなし。 | |
馬尾病変 | MS | 緩徐 | B | 雄 | G.シェパード、ラブラドル。7-9歳で発症が多い(3-5歳および9歳)。腰仙部に圧痛。 |
骨、軟骨、滑膜の腫瘍 | S | 急激 | B | 原発性骨、軟骨、滑膜の腫瘍が最も一般的。骨肉腫は大腿骨遠位、脛骨近位に出やすく、圧痛・腫脹を伴う。 | |
細菌性関節炎 | CBC | 急激 | B | 通常、単関節。痛み強く、挙上性の跛行。もともと存在した関節炎に起こりやすい | |
股関節周辺 | |||||
股関節異形成による変形性関節疾患(DJD) | MS | 緩徐 | A/D | 股関節伸展/外転で痛み。可動域の減少。レントゲンの重症度と痛みの強さは異る。大腿部筋萎縮。 | |
膝関節周辺 | |||||
変形性関節疾患(DJD) | M | 緩徐 | A/C | 多くは膝関節靱帯損傷、膝蓋骨脱臼、膝関節離断性骨軟骨炎に続発。伸展制限あり。 | |
前十字靱帯断裂 | S | 急激 | B | ロットワイラー、ニューファンドランド、ブルドッグ、チャウチャウ、ラブラドル、ハスキー 。過肥の避妊雌。7-10歳。慢性例では膝内側面の肥厚、関節の肥厚が著明。部分断裂の場合は発症年齢が若く、頻度は前十字靱帯断裂の内の25〜31%で、膝過伸展ストレスで痛みあり。 | |
膝蓋骨脱臼 | S | 急激 | B | 多くは外方脱臼。レトリバーでは内方脱臼も多い。前十字靭帯断裂に併発した場合には軽度の内方脱臼。 | |
腓腹筋頭の裂離 | S | 急激 | D | 膝伸展で痛み。大腿骨遠位尾側に 痛みと腫脹。腓腹筋種子骨の遠位方向への変位。 | |
半腱様筋(薄筋)の拘縮 | S | 緩徐 | B | ジャーマンシェパード。足根関節をひっくり返すような特徴的歩行。筋切除をしても2〜6か月後に再発。 | |
足根関節周辺 | |||||
靱帯性の不安定/過伸展 | CBC | 急/緩 | A/C | 外傷性、過肥、立ち足に併発。 | |
腓腹筋の裂離 | S | 急激 | 多くは咬傷、鋭的に切断。通常、筋腹が断裂する前に骨や腱が断裂するが、筋の場合には筋腱接合部が最も断裂しやすい。 | ||
アキレス腱の裂離 | S | 急激 | 腓腹筋の踵骨付着部が断裂し浅趾伸筋腱が正常の場合は、指先が屈曲した立ち方となる。活動犬あるいは5歳以上の犬(特にドーベルマン、ラブラドル) | ||
浅趾屈筋腱の変位/脱臼 | S | 急/緩 | C | 雌 | 4歳前後のコリー。肥満雌で多い。踵骨隆起周囲の肥厚。外方脱臼が多い。膝蓋骨内方脱臼に似た跛行。 |
変性関節疾患(DJD) | MS | 緩徐 | 足根関節の離断性骨軟骨炎、不安定、過伸展に続発。屈曲/伸展制限あり。 | ||
肺性肥大性骨症 | S | 急激 | B | 中足部から足根部に腫れと痛み。肺病変(まれに膀胱・肝臓腫瘍)の有無を確認。 |
- 治療方針:M=保存的治療、S=観血的治療、MS=保存的治療後経過により観血的治療、CBC=症例により様々
- 経過:A=良くなったり悪くなったり;B=進行性;C=間欠性;D=様々;E=自然に良化
小型犬の未成熟犬での後肢の跛行
治療方針 | 発症 | 跛行の推移 | 雌雄差 | コメント | 全身的原因/多発性 |
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外傷−骨折、脱臼 | CBC | 急激 | D | ||
栄養性二次性上皮小体機能亢進症 | CBC | 緩徐 | B | 肉のみの食餌(低カルシウム、高リン)。非常に軽度な外傷で骨折。病的骨折が起こった場合には急激に発症。 | |
股関節周辺 | |||||
虚血性大腿骨頭壊死/Legg-Calve-Perthes病 | S | 緩徐 | B | 雄 | 5-8ヵ月齢。10-17%で両側性。ヨーキー、T.プードル、M・ダックス、パグで多い。股関節伸展で痛み。大腿部筋萎縮。CT検査で早期に確定可能。 |
膝関節周辺 | |||||
膝蓋骨脱臼 | S | 急/緩 | B | やや雌 | ほとんどが内方脱臼。多くは両側性。T.プードルでは時に外方脱臼。脱臼が持続すると骨関節の変形。 |
足根関節周辺 | |||||
脛骨内反・内旋変形(脛骨異形成) | CBC | 緩徐 | B | 脛骨遠位の骨端線早期閉鎖による内反・内旋変形。M・ダックスで多い。片側あるいは両側性。外傷なく脛骨遠位成長板の内側が早期閉鎖。生後4-6ヶ月以降から歩行異常。膝蓋骨外方脱臼を併発することが多い。 |
小型犬の成犬での後肢の跛行
治療方針 | 発症 | 跛行の推移 | 雌雄差 | コメント | |
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全身的原因/多発性 | |||||
外傷−骨折、脱臼、神経-筋損傷 | CBC | 急激 | D | ||
頚椎病変−環軸椎亜脱臼 | MS | 急激 | D | ポメラニアン、トイプードル、ヨーキー。60%が1歳未満(8ヵ月齢前後が多い)、成犬では2〜6歳で発症。痛み強い。 | |
椎間板疾患 | CBC | 急激 | D | 軟骨形成異常の犬種(Hansen Type I)。3〜6歳齡で突然発症。 | |
脊髄圧迫する腫瘍 | S | 緩徐 | B | 中年〜高齢。徐々に進行。痛み少ない。 | |
多発性関節炎(関節リウマチ) | M | 緩徐 | B | 複数の関節が腫脹。8ヵ月-8歳齢(平均4歳)で発症が多い。M.ダックス、マルチーズ、ヨーキー、ポメ。関節の重度の不安定/脱臼を来す。主に手根関節、足根関節が侵される。時に肘関節、膝関節、肩関節、股関節、脊椎の関節が侵される。関節液検査で非変性好中球が多量。 | |
股関節周辺 | |||||
変形性関節疾患(DJD) | MS | 緩徐 | A/C | パグ、ブルドッグ、シーズー、キャバリア。 | |
股関節脱臼 | S | 急激 | D | 中年から高齢。過肥。ポメラニアン、T.プードルで軽度外力により脱臼。 | |
膝関節周辺 | |||||
変形性関節疾患(DJD) | MS | 緩徐 | A/C | ||
前十字靱帯断裂 | S | 急激 | D | やや雌 | 多くの場合、中年以降。過肥で膝蓋骨内方脱臼を伴うこと多い。 |
膝蓋骨内方脱臼 | CBC | 急/緩 | D | やや雌 | トイ犬種、柴犬。膝蓋骨内方脱臼、過肥、半月板損傷を併発している場合には手術が必要なことが多い。 |
長趾伸筋腱の脱臼 | S | 急激 | D | 跛行の程度は様々。クリック音と共に長趾伸筋腱が脛骨の伸筋溝から尾側に脱臼。膝蓋骨脱臼を伴うことあり。 | |
足根関節周辺 | |||||
浅趾屈筋腱の変位/脱臼 | S | 急/緩 | C | 雌 | 4歳前後のシェルティー、肥満雌で多い。踵骨隆起周囲の肥厚。外方脱臼が多い。膝蓋骨内方脱臼に似た跛行。 |
変形性関節疾患(DJD) | MS | ||||
炎症性関節疾患(関節リウマチ) | M | 緩徐 | B | 複数の関節が腫脹。8ヵ月-8歳齢(平均4歳)で発症が多い。M.ダックス、マルチーズ、ヨーキー、ポメ。進行例では関節の重度の不安定/脱臼を来す。 | |
肺性肥大性骨症 | S | 急激 | B | 中足部から足根部に腫れと痛み。肺病変(まれに膀胱・肝臓腫瘍)の有無を確認。 |
- 治療方針:M=保存的治療、S=観血的治療、MS=保存的治療後経過により観血的治療、CBC=症例により様々
- 経過:A=良くなったり悪くなったり;B=進行性;C=間欠性;D=様々;E=自然に良化